MainImage

成長障害



「うちの子、お友達より小さくないかしら…」「最近身長があまり伸びなくなった…」「まだ思春期には早いはずなのに急に身長が伸び始めた…」そんなご相談をお待ちしております。

子どもの標準的な成長を理解する

子どもの標準的な成長パターン

生まれたばかりの赤ちゃんの身長は約50cm。1歳で約75cmになり、生まれた時の1.5倍になります。生まれてから1年間は私たちの身長が最も伸びる時期です。その後、思春期の前までは伸びは徐々にゆるやかになっていきます。
思春期になると、再び身長が伸びはじめます。
これを「思春期のスパート」といいます。男の子は12~14歳が伸び盛りで年に約10cm、女の子は10~12歳が伸び盛りで年に約8cmも伸びます。しかし、思春期はスパートがあると同時に成長が止まる時期でもあります。思春期の後半は、成長率が急速に低下して最終的に成長が止まります。

大切なのは毎日の生活習慣

睡眠

「寝る子は育つ」と昔からよく言われます。成長ホルモンはおもに夜、睡眠中に分泌されます。睡眠時間が不十分だったり、生活が不規則だったりすると十分な成長ホルモンが分泌されず、成長が妨げられる場合があります。
幼児であれば11〜12時間、小学生であれば10時間程度の睡眠をとることが理想です。気管支ぜん息や、睡眠時無呼吸症候群など基礎疾患がある場合にはしっかりと治療します。

食事

三食しっかりと食べましょう。特に朝食はおろそかになりがちです。炭水化物、たんぱく質、野菜など複数の品目を組み合わせて食べることが大切です。「牛乳をたくさん飲むと背が伸びる」ということがありますが、摂りすぎはかえって他の食事の妨げになったり、肥満の原因になったりします。
大体1日で300〜400mlが目安です。寝る前の夜食は成長ホルモンの分泌の妨げになってしまいます。しっかりと食事が摂れていればサプリメントなどは不要です。

運動

適度な運動は骨の成長を促します。食欲が増したり、よく眠れたり生活リズムを整えるのに不可欠です。でも、あまり激しい運動は必要ありません。幼児や小学生であれば「元気に外で遊ぶ」ことを心がければ十分です。

低身長とは

同じ年齢の子どもたちの身長を測ると、平均値を中心に正規分布を示すことが知られています。平均値からのばらつきの大きさを標準偏差(standarddeviation:SD)をつかって表します。医学的に低身長と言われるのは身長が-2SDを下回る場合です。これは全体の2.3%で100人のうち身長が低い方から2~3人くらいの割合です。ただ低身長だからといってすべてが病気というわけではありません。多くは体質だったり、原因のはっきりしない低身長です。

低身長の原因

ホルモンの異常(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンなど)
染色体の異常(ターナー症候群など)
小さく生まれたことが原因になるもの(SGA性低身長)
骨や軟骨の異常(軟骨無形成症など)
主要臓器の病気(心臓、腎臓、肝臓、腸の病気など)
心理社会的な原因(愛情遮断症候群など)
病気とは考えにくいもの(家族性低身長、思春期の遅れ、特発性低身長)

低身長の原因は様々です。乳幼児の時期は哺乳量や離乳の遅れなど栄養が大きく関与します。小児期を通じて成長ホルモン、甲状腺ホルモン、思春期以降は性ホルモンなどホルモンの分泌が悪いと低身長の原因となります。虐待や、学校でのいじめなど心理社会的な問題が成長障害の原因になることもあります。

SGA性低身長

SGA(small-for-gestationalage)とは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいた週数に比して標準的な身長、体重より小さく生まれることです。SGA児の多くは2~3歳までに標準身長に追いつくことができますが約10%は標準身長に達することができず、これをSGA性低身長と言います。SGA性低身長は3歳から成長ホルモン治療が可能です。

成長曲線を描いてみよう

子どもの成長を正確に評価することは低身長などの成長障害にはやく気がつくため、その原因を知るためにとても大切です。この成長を評価するツールが「成長曲線」です。成長曲線の用紙は下記のサイトなどからダウンロードできます。また、かかりつけの先生から頂くこともできると思います。

一般的な成長曲線では横軸に年齢の目盛りが、縦軸に身長と体重の目盛りがあります。年齢ごとに身長と体重の値を点でうち、それを線で結ぶことで完成します。成長曲線を作成して描いた線が-2SDの線より下にあれば低身長です。-2SDを下回らなくても、描いた線が標準的な線を横切って横に寝ていたり、立っているようなら何らかの異常がある場合があります。このような場合にはまずはかかりつけの医師に相談してください。

受診が勧められる成長曲線とは
身長が-2SD以下の場合
まだ伸びるはずの時期に伸びが悪くなり成長曲線が横に寝てきた場合
思春期が来る時期でもないのに急に身長が伸びて成長曲線がたってきた場合

成長曲線の一例

成長曲線の一例を示します。12歳の女の子。「最近背が伸びない」という理由で当院を受診しました。成長曲線を描いてみると10歳頃から急激に身長の伸びが悪くなっているのがわかります。描いた線が標準的な線を横切っています。同じように10歳頃から体重の減少も認められます。この子の最終診断は脳腫瘍でした。大学病院で手術をして治癒しました。
成長障害の診療をしているとたまにこのようなケースに出くわします。子どもの身長の伸びが悪いことに気がついたご家族はすごいと思いましたが、誰かが成長曲線でこの子の成長を観察していればもう少し早く異常に気がついたかもしれません。

成長障害の診療と治療の実際

専門外来はどのようなもの?

初診の段階で最も大切なのは詳細な問診と体格の測定、成長曲線の作成です。実はこの段階である程度、成長障害の原因を予測することができます。
スクリーニング検査として血液検査や尿検査、レントゲン検査(骨年齢の測定)を施行します。必要に応じて染色体検査や頭部MRI検査を施行します。これらの検査からホルモンの分泌異常が疑われる場合は分泌刺激試験などの精密検査を行います。仮にこれらの検査で異常がない場合にも、半年~1年ごと定期的にfollowすることが大切です。

成長ホルモン治療

検査の結果、成長ホルモンの分泌不全が証明された場合は、成長ホルモン治療を行います。成長ホルモンは内服で投与しても胃で分解されてしまうため注射で補充する必要があります。「自己注射」といって、家庭で親や本人が注射を行います。最近では注入器や使用する針も工夫されていて、あまり痛みはありません。通常は週6~7回、夜寝る前にお尻や太ももに注射します。注射スケジュールを工夫することで短期間の宿泊や旅行であれば、その間注射をお休みすることも可能です。
成長ホルモン治療をはじめると毎年の身長の伸び率が徐々に改善します。目標とする身長に到達するためには時間がかかり、早期の診断と治療開始、そして根気強く治療を継続することが大切です。

保険により成長ホルモン治療が認められている病気
成長ホルモン分泌不全性低身長症
ターナー症候群
SGA性低身長症
慢性腎不全に伴う成長障害
軟骨無形成症と軟骨低形成症
プラダーウィリー症候群
成人成長ホルモン分泌不全症

お子様の身長が気になるご家族の皆様へ

健全な成長は健康な心とからだがあってこそ。子どもの成長を評価することは、病気を見つけるだけでなく普段の子どもの健康をチェックするためにも大切です。「毎年お誕生日の時に」とか「進級のときに」など、タイミングを決めて成長曲線をつけてみることをお勧めします。当院かかりつけのお子様に関しては、半年ごとに身長と体重を計測して評価しています。一緒に子どもの成長を見守っていきましょう。