小児も成人と同様に新型コロナウイルス(COVID-19)に感染します。ただし、患者数としては成人に比して少なめで、小児でも乳幼児より小学校高学年や中学生の方が多い印象です。
重症度と症状
新型コロナウイルス感染症の症状や重症度は、流行している株によって多少異なりますが、成人に比して小児の方が比較的軽症の場合が多いです。
症状は発熱や咽頭痛(喉の痛み)、咳嗽などが主ですが、時に嘔吐や腹痛を呈することもあります。インフルエンザに比較すると有熱期間はやや短く(概ね48時間から72時間程度)、咳嗽などもあまり強くありません。それに比して喉の痛みを訴える患者さんが多い印象です。新型コロナウイルスの流行が始まった頃は小児でも肺炎を呈するお子さんが少なくなかったのですが、最近はほとんど見かけなくなっています。成人で時に問題になる味覚異常もあまりありません。
このように最近の新型コロナウイルス感染症は小児においては他のウイルス感染症とあまり大きな違いがなく、過度に怖がる病気ではありませんが、もちろん重症化しないわけではありません。特に新生児や乳児期早期に感染した場合、心臓などに基礎疾患がある場合などは注意が必要です。
後遺症(ロングCOVID)について
小児でもCOVID-19の後遺症、いわゆるロングCOVIDが報告されています。疲労感、集中力の低下、呼吸器症状などが数週間以上続く場合がありますが、成人に比べると発生率は低いとされています。
診断
インフルエンザと同様に、鼻腔から検体を採取して迅速検査で診断します。PCR検査も可能ですが、新型コロナウイルスが5類感染症に移行してからは検査結果が出るまでに時間がかかるために殆ど実施しなくなりました。
両親や兄妹がすでに新型コロナウイルスに感染しているなど、明確な接触歴が確認できる場合には検査を実施せず臨床症状から診断する場合があります。
ドラッグストアなどで検査キットが販売されていますからご自宅で検査を実施することもできます。この場合は発熱後概ね24時間くらい経過した頃に実施してみてください。あまり早期に検査を行った場合には陰性(偽陰性)になります。
治療
他のウイルス疾患と同様に対症療法が基本です。水分や栄養を十分にとって療養してください。解熱剤は市販のものや他の感染症と同様にアセトアミノフェンが利用可能です。
12歳以上では発症早期であれば抗ウイルス薬の使用も可能です。無治療でも48時間から72時間程度で解熱することが多いですから使用するメリットはインフルエンザに比べると高くはありませんが、発症初期から高熱で症状が強い場合、基礎疾患がある場合は検討しても良いでしょう。またウイルスの排出期間が短縮されるため、ある程度家族内感染のリスクを下げることも期待できます。
新型コロナウイルスのワクチンについて
新型コロナウイルスワクチンは生後6か月から接種可能です。新型コロナウイルスが家族内感染する場合、多くは成人や年齢の高い小児が罹患して乳幼児が家族から感染するケースが多いです。ですから、まずは両親や学童期の兄弟の接種を優先し、その後に(あるいは他の家族と一緒に)乳幼児の接種を検討してください。日本小児科学会ではすべての年齢の新型コロナウイルスワクチンの接種を推奨しています。
新型コロナウイルスワクチンの副反応は発熱や接種部位の腫れなどになります。頻度は他のワクチンとほぼ同等で成人が接種した場合より軽い場合が多く、発熱や腫れは仮に出現しても数日でおさまります。
新型コロナウイルスが5類感染症に移行したことに伴い、小児の新型コロナウイルスワクチンも任意接種(有料)になりました。接種を検討している場合はかかりつけ医と相談してください。
2024年9月現在、当院ではご希望の方に接種できるよう準備中です(任意接種)。
学校や保育園での感染対策
小児は学校や保育園などで集団生活を送ることが多く、感染のリスクが高まります。マスクの着用、手洗い、換気の徹底などの感染対策が重要です。マスクの着用に関しては2歳未満は非推奨、2歳以上でも運動時や登下校時、周りに人があまりいない場合などはマスクをする必要はありません。特に夏場は熱中症などのリスクが高まりますから状況に応じてマスクを使用してください。
(備考)新型コロナウイルス感染症における日本の変遷
1. 初期の感染拡大(2020年初頭)
2020年1月、日本で最初のCOVID-19感染者が確認され、中国・武漢からの帰国者やダイヤモンド・プリンセス号での集団感染が注目されました。初期の段階では、感染症の正体や対応がまだ明確でなく、全国的に緊急事態宣言や外出自粛要請が行われました。
2. 第1波から第3波まで(2020年〜2021年)
• 第1波(2020年4月頃):最初の大規模な感染拡大が始まり、東京や大阪を中心に感染が広がりました。この時期には全国で緊急事態宣言が発出され、学校の休校やテレワークの推奨、飲食店の休業要請が行われました。
• 第2波(2020年夏):政府による「Go To キャンペーン」などの経済振興策とともに、再び感染が拡大しました。この波では、若年層の感染が増加し、感染者数がさらに拡大しました。
• 第3波(2020年冬〜2021年初頭):冬季に入り、感染者数が急増し、医療機関の逼迫が問題視されました。この時期には再度の緊急事態宣言が発出され、特に医療体制の強化が求められました。
3. ワクチン接種の開始(2021年)
2021年2月から医療従事者へのワクチン接種が始まり、その後高齢者や一般市民への接種が進みました。ワクチンの普及により、重症化や死亡率が大幅に抑制され、感染状況は一定の安定を見せるようになりました。
4. デルタ株と第5波(2021年夏)
2021年夏にはデルタ株が日本で広がり、過去最大の感染者数を記録しました。この時期、ワクチン接種は進んでいましたが、感染力の強いデルタ株により感染拡大が抑えきれない状況が続きました。
5. オミクロン株と第6波以降(2021年末〜2022年)
2021年末からオミクロン株による第6波が始まりました。オミクロン株は感染力が非常に強いものの、重症化率はデルタ株よりも低く、これに伴い政府は規制を緩和し、経済活動の回復に向けた方針を取るようになりました。
6. 社会と経済の再開(2022年以降)
2022年からはワクチン接種が広く普及し、ブースター接種も進められ、社会は徐々に平常を取り戻し始めました。感染対策を継続しつつも、経済活動や国際交流が徐々に再開され、2023年5月にこれまでの感染症法における2類相当から5類に分類が変更されると大規模な規制がほとんど解除されました。
7. マスクや新たな生活様式の定着(2023年以降)
日本では、マスク着用や手洗いなどの感染対策が日常生活に浸透しました。感染状況が改善しても、多くの人が自主的にマスクを着用し、公共の場での衛生管理が習慣化しています。
これらの変遷を経て、日本はCOVID-19との共存を模索し、社会経済活動を再開させながら、引き続き感染対策を継続しています。