RSウイルス・ヒトメタニューモウイルス感染症
●どんな病気?
RSウイルス感染症は、RSウイルスが呼吸器に感染することで発症します。これまで秋から冬にかけて流行すると言われてきましたが、近年春先から流行することが増えています。何度でも感染を繰り返しますが、多くは2歳までに初感染します。年長児、成人が感染した場合は軽い風邪症状程度(咳嗽が遷延します)の場合が多いのですが、赤ちゃんが感染した場合には細気管支炎や肺炎をきたし、喘鳴(のどからヒューヒュー・ゼイゼイと音がする)や呼吸困難に陥る可能性があります。細気管支炎の約7割がこのRSウイルス感染によると考えられます。
ヒトメタニューモウイルスもRSウイルスと概ね同様の症状を呈しますが、RSウイルスが主に新生児や乳児が注意すべき感染症なのに対して、ヒトメタニューモウイルスは幼児でも重症化することが少なくない感染症です。特に熱が高く、解熱まで時間がかかる場合は肺炎を合併している可能性が少なくありません。
両ウイルスともに患者の咳などでウイルスが飛び散って感染します(飛沫感染)。肺炎や細気管支炎になると、症状が次第に悪化して喘鳴、呼吸困難を認めます。未熟児、心臓の病気、喘息などの合併症がある場合には重症化のリスクが高いです。1週間程度の経過で症状は改善します。
●治療と感染予防
残念ながら両感染症の特効薬はありません。抗生剤も無効です。気管支拡張薬、去痰剤、吸入療法などを用いて対症療法を行います。自宅ではこまめに水分補給を行なって痰がつまらないように心がけてください。極端に機嫌が悪い時や、呼吸が荒く水分補給が困難な場合には様子をみることなく速やかに受診してください。
現在のところ両ウイルスに対するワクチンも存在しません。手洗いやうがいなど日常的な感染予防が重要になります。年長児や成人が感染した場合には多くは軽症です。「軽い風邪だから」と安心して、赤ちゃんに触れると赤ちゃんが重症化する場合があります。咳や微熱がある場合にはできる限り赤ちゃんには近づかず、室内でもマスクなどを使用してください。