よくある質問

2024.12.01更新

小児も成人と同様に新型コロナウイルス(COVID-19)に感染します。ただし、患者数としては成人に比して少なめで、小児でも乳幼児より小学校高学年や中学生の方が多い傾向があります。

 

重症度と症状
新型コロナウイルス感染症の症状や重症度は、流行している株によって多少異なりますが、成人に比して小児の方が比較的軽症の場合が多いです。
症状は発熱や咽頭痛(喉の痛み)、咳嗽などが主ですが、時に嘔吐や腹痛を呈することもあります。インフルエンザに比較すると有熱期間はやや短く(概ね48時間から72時間程度)、咳嗽などもあまり強くありません。それに比して喉の痛みを訴える患者さんが多い印象です。新型コロナウイルスの流行が始まった頃は小児でも肺炎を呈するお子さんが少なくなかったのですが、最近はあまり見かけなくなっています。
このように最近の新型コロナウイルス感染症は小児においては他のウイルス感染症と大きな違いがなく、過度に怖がる病気ではありませんが、重症化のリスクがないわけではありません。特に新生児や乳児期早期に感染した場合、心臓などに基礎疾患がある場合などは注意が必要です。

 

後遺症(ロングCOVID)について
小児でもCOVID-19の後遺症、いわゆるロングCOVIDが報告されています。疲労感、集中力の低下、呼吸器症状などが数週間以上続く場合がありますが、成人に比べると発生率は低いとされています。

 

診断
インフルエンザと同様に、鼻腔から検体を採取して迅速検査で診断します。PCR検査も可能ですが、新型コロナウイルスが5類感染症に移行してからは検査結果が出るまでに時間がかかるために殆ど実施しなくなりました。
両親や兄妹がすでに新型コロナウイルスに感染しているなど、明確な接触歴が確認できる場合には検査を実施せず臨床症状から診断する場合があります。
ドラッグストアなどで検査キットが販売されていますからご自宅で検査を実施することもできます。この場合は発熱後概ね24時間くらい経過した頃に実施してみてください。あまり早期に検査を行った場合には陰性(偽陰性)になります。

 

治療
他のウイルス疾患と同様に対症療法が基本です。水分や栄養を十分にとって療養してください。解熱剤は市販のものや他の感染症と同様にアセトアミノフェンが利用可能です。
12歳以上では発症早期であれば抗ウイルス薬の使用も可能です。無治療でも48時間から72時間程度で解熱することが多いですから使用するメリットはインフルエンザに比べると高くはありませんが、発症初期から高熱で症状が強い場合、基礎疾患がある場合は検討しても良いでしょう。またウイルスの排出期間が短縮されるため、ある程度家族内感染のリスクを下げることも期待できます。

 

新型コロナウイルスのワクチンについて
新型コロナウイルスワクチンは生後6か月から接種可能です。新型コロナウイルスが家族内感染する場合、多くは成人や年齢の高い小児が罹患して乳幼児が家族から感染するケースが多いです。ですから、まずは両親や学童期の兄弟の接種を優先し、その後に(あるいは他の家族と一緒に)乳幼児の接種を検討してください。日本小児科学会ではすべての年齢の新型コロナウイルスワクチンの接種を推奨しています。
新型コロナウイルスワクチンの副反応は発熱や接種部位の腫れなどになります。頻度は他のワクチンとほぼ同等で成人が接種した場合より軽い場合が多く、発熱や腫れは仮に出現しても数日でおさまります。
新型コロナウイルスが5類感染症に移行したことに伴い、小児の新型コロナウイルスワクチンも任意接種(有料)になりました。接種を検討している場合はかかりつけ医と相談してください。

 

学校や保育園での感染対策
小児は学校や保育園などで集団生活を送ることが多く、感染のリスクが高まります。マスクの着用、手洗い、換気の徹底などの感染対策が重要です。マスクの着用に関しては2歳未満は非推奨、2歳以上でも運動時や登下校時、周りに人があまりいない場合などはマスクをする必要はありません。特に夏場は熱中症などのリスクが高まりますから状況に応じてマスクを使用してください。

 

(参考)自宅のコロナ検査キットで陽性が出た場合。全身状態が良ければ自宅で療養をしてください(必ずしも受診は必要ありません)。療養期間は発熱日(発熱がない場合は検査日)を0日として5日間です。解熱剤や咳止めなどが必要な場合(12歳以上では抗ウイルス薬の処方も可能)は、アイチケットで順番予約の後来院してください。また保育園児などでは登園再開に際して証明書が必要になる場合があります。証明書の発行をご希望の場合も受診をお願いします。


(備考)新型コロナウイルス感染症における日本の変遷
1. 初期の感染拡大(2020年初頭)
2020年1月、日本で最初のCOVID-19感染者が確認され、中国・武漢からの帰国者やダイヤモンド・プリンセス号での集団感染が注目されました。初期の段階では、感染症の正体や対応がまだ明確でなく、全国的に緊急事態宣言や外出自粛要請が行われました。

2. 第1波から第3波まで(2020年〜2021年)
• 第1波(2020年4月頃):最初の大規模な感染拡大が始まり、東京や大阪を中心に感染が広がりました。この時期には全国で緊急事態宣言が発出され、学校の休校やテレワークの推奨、飲食店の休業要請が行われました。
• 第2波(2020年夏):政府による「Go To キャンペーン」などの経済振興策とともに、再び感染が拡大しました。この波では、若年層の感染が増加し、感染者数がさらに拡大しました。
• 第3波(2020年冬〜2021年初頭):冬季に入り、感染者数が急増し、医療機関の逼迫が問題視されました。この時期には再度の緊急事態宣言が発出され、特に医療体制の強化が求められました。

3. ワクチン接種の開始(2021年)
2021年2月から医療従事者へのワクチン接種が始まり、その後高齢者や一般市民への接種が進みました。ワクチンの普及により、重症化や死亡率が大幅に抑制され、感染状況は一定の安定を見せるようになりました。

4. デルタ株と第5波(2021年夏)
2021年夏にはデルタ株が日本で広がり、過去最大の感染者数を記録しました。この時期、ワクチン接種は進んでいましたが、感染力の強いデルタ株により感染拡大が抑えきれない状況が続きました。

5. オミクロン株と第6波以降(2021年末〜2022年)
2021年末からオミクロン株による第6波が始まりました。オミクロン株は感染力が非常に強いものの、重症化率はデルタ株よりも低く、これに伴い政府は規制を緩和し、経済活動の回復に向けた方針を取るようになりました。

6. 社会と経済の再開(2022年以降)
2022年からはワクチン接種が広く普及し、ブースター接種も進められ、社会は徐々に平常を取り戻し始めました。感染対策を継続しつつも、経済活動や国際交流が徐々に再開され、2023年5月にこれまでの感染症法における2類相当から5類に分類が変更されると大規模な規制がほとんど解除されました。

7. マスクや新たな生活様式の定着(2023年以降)
日本では、マスク着用や手洗いなどの感染対策が日常生活に浸透しました。感染状況が改善しても、多くの人が自主的にマスクを着用し、公共の場での衛生管理が習慣化しています。
これらの変遷を経て、日本はCOVID-19との共存を模索し、社会経済活動を再開させながら、引き続き感染対策を継続しています。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2024.10.02更新

フルミストは2024年10月に発売された新しいインフルエンザワクチンです(海外では以前から使用されて実績があります)。従来のインフルエンザワクチンに置き換わる訳ではなく、患者さん毎に選択して接種することになります(従来のインフルエンザ不活化ワクチンと、フルミストを両方接種する必要はありません)。対象年齢は2歳から13歳未満になります。

フルミストはインフルエンザウイルスを弱らせて(弱毒化して)ワクチンとして用いる弱毒生ワクチンです。他に弱毒生ワクチンとしては麻疹・風疹ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンなどがあります。これらのワクチンと同様に接種後数日から1週間程度の間にインフルエンザ様の症状(鼻汁や頭痛、喉の痛みなど)を認める場合があります。

生ワクチンの特性上、免疫機能に異常がある疾患に罹患している方、免疫抑制をきたす治療を継続中の方、妊婦の方は接種ができません。
フルミストと従来のインフルエンザワクチの効果はほぼ同等と考えられています。

従来のインフルエンザワクチンとは異なり鼻に少量の液体を噴霧します。また従来のワクチンは13歳未満は2回接種ですが、フルミストは1回で接種が完了します。これまで注射が苦手でインフルエンザワクチンが接種できなかった方、来院回数を減らしたい方に選択してもらいたいワクチンです。
※ ただし、噴霧用の容器が注射器のような形をしているためお子さんによっては容器の形状や鼻に噴霧するというこれまでに経験のない医療行為に怖がってしまう子もいるかもしれません。投与量は左右の鼻に0.1mlずつとごく少量ですからしみたり不快な違和感はあまりないと思います。

フルミスト接種要項
対象年齢は2歳から18歳までの方(接種時に19歳未満)。1回接種
※ 同シーズンに従来のインフルエンザ不活化ワクチンを接種予定の方、接種を済ませた方は必要がありません。

接種不適当者:含有成分であるゼラチンに対して重篤なアレルギー症状の既往がある方、免疫機能に異常がある疾患に罹患している方、免疫抑制をきたす治療を継続中の方、妊娠の可能性のある方。該当する方は従来のインフルエンザ不活化ワクチンを接種してください。

当院が考える接種を推奨しない方:免疫機能に異常がある疾患に罹患している方や免疫抑制をきたす治療を継続中の方が同居している場合、妊娠中の女性が同居している場合。授乳中の方。既に本年度従来のインフルエンザ不活化ワクチンで接種を開始している方や完了している方。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2024.05.17更新

2024年1月にRSウイルスワクチン(妊婦がワクチンを接種することで、生まれてくる赤ちゃんをRSウイルスから守るためのワクチン)が承認されました。接種対象は妊娠24週から36週の方。ワクチンは1回接種です。
2024年6月からぽっけ、あっぷりけでも接種が可能になるように準備をしています。
詳細が決まりましたらお知らせします。

RSウイルス感染症とは
RS ウイルスは世界中に広く分布しており、生後 1 歳までに50%以上が、2 歳までにほぼ 100%が RS ウイルスに感染します。乳幼児における肺炎の約 50%、細気管支炎の 50~90%がRS ウイルス感染症によるとされています。症状は感冒様症状から下気道感染に至るまで様々ですが、特に生後6 か月未満で感染すると重症化することが非常に多いです。新生児や乳児早期に感染すると無呼吸や急性脳症を合併することも少なくありません。後遺症として反復性喘鳴(気管支喘息)があります 。
日本では、毎年約12 万~14 万人の2 歳未満の乳幼児がRS ウイルス感染症と診断され、約 4 分の1(約3万人)が入院を必要とすると推定されていますが、有効な治療薬はありません 。

RSウイルスワクチンについて
これまでもシナジスという注射薬(ワクチンではない)が主に早産児や心臓に病気のある赤ちゃんに接種されてきました。ただしRS ウイルス感染による乳児の入院は、基礎疾患を持たない正期産児の場合も多く 、特に生後 2 か月頃までに感染すると重症化のリスクが非常に高いため、生後早期から予防策が必要とされていました。
こうした疾患の特性から、RS ウイルスワクチンは、国による開発優先度の高いワクチンに指定され、承認が待ち望まれていました。

今回接種が開始されるRSウイルスワクチンは承認前の臨床試験において、重度のRS ウイルス下気道感染症に対して生後 90 日で81.8%、生後 180 日で 69.4%有効でした。

私たち小児科医は咳や喘鳴がつらく、時に入院を要するRSウイルス感染症の赤ちゃんをたくさん診療しています。このワクチンの普及で少しでもRSウイルス感染症で辛い思いをする赤ちゃんが減ることを期待しています。もうすぐ新しい家族を迎える多くの妊婦さんに接種してもらいたいワクチンです。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2020.05.30更新

1.小学校入学前に接種すべきワクチ

 母子手帳にてお子さまの接種歴を確認してみてください。不足しているかな?と感じた場合はお気軽にご相談ください。

 小学校入学前に接種すべきワクチン

 

 麻疹風疹ワクチン(MR)、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチンは1回では不十分です。2回接種することでほとんどの人がこれらの病気にかからなくなり、かかったとしても軽い症状で済むことができます。

 四種混合ワクチンで予防することができるジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオですが、小学校入学頃になると徐々にその抗体が低下してきていることが解ってきました。実際、5歳頃から急激に百日咳患者が増え、患者の多くが小学生〜中学生です(図1)。これを予防するために小学校入学前に三種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳)と不活化ポリオワクチンの接種をお勧めしています(任意接種)。また11〜12歳で接種する二種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)(定期接種)を三種混合ワクチンに変更することもできます(任意接種となります)。

百日咳の年齢分布

 

2.小学校以降で接種するワクチン

・日本脳炎ワクチン(9〜12歳)(定期接種)

・二種混合ワクチン(11〜12歳)(定期接種)三種混合ワクチンに変更可能(任意接種)

・HPVワクチン(小6〜高1相当女子)(定期接種)現在は接種の積極的勧奨が控えられていますが、子宮頸がんを予防することのできる大切なワクチンです。ぜひ接種をご検討ください。

・髄膜炎菌ワクチン(2歳以上)(任意接種)高校や大学で寮生活をする場合、海外留学を検討する場合は接種をお勧めしてます。

・インフルエンザワクチン(毎年)(任意接種)

 

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 

 

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2019.12.30更新

百日咳菌によって発症する呼吸器感染症です。
百日咳は近年、学童や成人の感染が増加し、年間1万人くらいの方が発症していると考えられています。幼児期に接種する四種混合ワクチン(DTaP-IPV)で予防が可能ですが、5歳頃までに基礎免疫が徐々に低下して再び感染のリスクが高くなります。ただ学童や成人の場合、咳が長引く程度で百日せきと気が付かない場合も少なくありません。そのような方を介して赤ちゃんが感染してしまうことが問題になっています。四種混合ワクチンが完了していない赤ちゃんが感染すると呼吸困難、無呼吸発作や突然死、脳症などで重篤な後遺症を残したいり死に至る危険性もあります。

• 咳が出るときはあまり赤ちゃんに近づかないで下さい。手洗いやマスクで感染を予防します。

• 検査、治療が可能ですから咳が長引く場合は受診してください。

• 日本小児科学会では百日咳の予防のために三種混合ワクチンの追加接種を推奨しています(任意接種)。小学校に入る前の1年間、11歳から12歳頃の2回の接種を是非ご検討ください。「自分自身と大切な家族を守るためにお兄ちやん、お姉ちゃんが頑張ろう!」

百日咳 

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2019.06.27更新

髄膜炎菌は健康な人の喉や鼻腔にも存在しています。人から人へ感染し、血液や髄膜に侵入すると全身に広がって敗血症、髄膜炎、髄膜脳炎などの侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)を引き起こします。発症率はそれほど高くはありませんが、ひとたびIMDを発症すると進行が非常に速く、重症化して死に至る危険性もあります。

発症初期の症状は発熱や頭痛、嘔吐などで風邪症状との区別が困難です。進行した場合の致死率は19%程度と報告されていて、発症から24〜48時間で5〜10%が死亡し、回復しても10〜20%の患者さんに難聴や神経障害、循環不全による四肢の壊死など回復困難な後遺症を残します。

世界では毎年50万人が髄膜炎菌感染症を発症し、5万人が死亡していると推定されています。途上国以外でもアメリカやイギリス、オーストラリアなどでも多くの報告があります。国内での発症はこれらの国に比べると多くはありませんが、高校の運動部の寮で集団発生したケースなどがあります。

 

治療が難しい髄膜炎菌感染症ですが、髄膜炎菌感染症にはワクチンが存在します。

アメリカやカナダ、オーストラリア、イギリスなどでは髄膜炎菌ワクチンは定期接種となっています。残念ながら日本では任意接種となりますが、2歳以上で接種が可能です。高校や大学の部活動などで寮生活を検討する場合、海外留学をする場合などに接種をお勧めします。

 

日本ではメナクトラというワクチンが接種可能です。髄膜炎菌には複数の株が存在します。このうち血清型A、B、C、Y、W-135がIMDの原因となります。メナクトラはこのうち4種類の抗原(血清型A、C、Y、W-135)を含みます。接種回数は1回です。

 

 

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2016.10.31更新

ロタウイルスは乳幼児の胃腸炎の主な原因です。嘔吐と下痢、発熱が主な症状です。冬から春にかけて流行し、「白っぽい下痢」、「酸臭の下痢」としてよく知られます。世界では年間約53万人の子供たちが命を落としているという報告があります。日本でも6歳未満の小児のうち年間約80万人が外来受診していると予想され、うち10%程度が脱水をきたし、入院治療を要するケースも少なくありません。脳炎や腸重積症、腎不全などの重篤な合併症が存在するのも特徴です。伝染力は非常に強く、感染者の便から数週間〜1か月程度排出されます。

ロタウイルスは多くは初感染で重症化します。5歳頃までにほぼ100%の乳幼児が感染し、感染を繰り返すと徐々に軽症化します。小学生や成人でも感染する場合がありますが、3回目以降の感染では多くは無症状、あるいは軽症です。

●ロタウイルスワクチン
ロタウイルスワクチンは現在2種類が存在しています(ロタリックスとロタテック)。いずれも生ワクチンです。どちらも生後6週以降(当院の推奨は生後2か月からヒブ、肺炎球菌、B型肝炎ワクチンとの同時接種)14週6日までに初回接種を開始することが推奨されます。両者の特徴は以下の通りです。

・ロタリックス:2回接種。対応するウイルス株は1種類ですが、それ以外の株に対しても病気の発症を抑えることができます。2回の接種で済むため比較的ワクチンスケジュールが組みやすく、短期間で病気に対する抵抗力をつけることができます。

・ロタテック:3回接種。対応するウイルス株は5種類で、より多くの種類のロタウイルスに対して抗体を獲得することができます。これは非常に有効な特徴ですが接種回数が多いために同時接種を導入しないとロタウイルス、同時期に接種が推奨されるヒブ、肺炎球菌などの感染症予防が遅れてしまう可能性があります。

副作用としては10%未満の確率で下痢が認められます。ロタウイルスの経口生ワクチンが初めて使用された際、腸重積症の報告が増加しました。現在流通しているものとは全く別のワクチンであり、ロタリックス、ロタテックに関しては腸重積症の患者が有意差をもって増加したとの報告はありません。ただ、ロタウイルスの経口生ワクチンを使用する際には、有効性とともに腸重積症の症状(激しく間欠的な啼泣、嘔吐、血便)を理解して子供たちの体調変化に気を配る必要があるでしょう。ワクチン使用後、7日以内に発症する可能性があり、1か月程度は経過観察を要すると思われます。

日本では比較的新しいこれらのワクチンですが、既に海外では多くの国で採用されています。どちらのワクチンも有効率は非常に高く、80%以上の確率で感染を防止し、90%以上の確率で重症化を防ぐと予想されます。ロタウイルスの危険性を考慮すると是非接種いただきたいワクチンです。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2016.10.31更新

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによっておこるウイルス感染症です。主な症状は高熱、頭痛や咽頭痛、関節痛、咳や鼻汁です。発熱は無治療ではだいたい5日間くらい続きます。感染してから発熱などの症状が現れるまでの潜伏期はだいたい2~3日です。

●インフルエンザの合併症
注意すべき合併症は肺炎と脳炎・脳症です。意識障害、痙攣、異常行動(奇声をあげる、意味のわからない発言や行動など)の症状がある場合には直ちに受診が必要です。抗インフルエンザ薬(タミフルなど)と異常行動の関連が疑われましたが、現在はインフルエンザ感染自体が異常行動の原因と考えられています。抗インフルエンザ薬の使用の有無にかかわらず、お子さんを一人で寝かせたり、お留守番させたりすることなく見守ってあげてください。

●インフルエンザの診断
迅速診断キットでその場で診断が可能です。十分にウイルスが増殖していないと検査が陽性になりません。だいたい発熱後6時間で5割程度、12時間で8割程度が陽性になります。発熱後まもなくでも症状が強く、インフルエンザが疑わしい場合には検査の結果を待たずに抗インフルエンザ薬の治療を開始する場合があります。

●インフルエンザの治療
他の病気と同様に、インフルエンザの治療でも最も大切なことはしっかりと休養を取ることです。症状をよく観察しながら十分に水分をとらせて、汗などの対処をして休ませます(「よくあるご質問」の中の「発熱時のケア」を参照してください)。

症状が強い場合には抗インフルエンザ薬を使用します。抗インフルエンザ薬はインフルエンザの増殖を抑えてその症状を和らげる、解熱までの期間を短縮する、合併症の発症を抑制する効果が期待されます。でも、抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスを殺すわけではありませんから過信は禁物です。

現在、抗インフルエンザ薬には以下のように複数の種類があります。症状が改善しても途中で使用を中止することなく医師の指示通り最後まで使用することが大切です。その他、一部の漢方薬などで症状を緩和することができます。発熱がつらい場合は解熱剤を使用します。小児の場合は必ずアセトアミノフェンが主成分の解熱剤(アンヒバ座薬やカロナールなど)を使用します。

※抗インフルエンザ薬の種類
・内服薬 タミフル(1日2回 5日間内服します)
・吸入薬 リレンザ(1日2回 5日間吸入します) イナビル(1回吸入で効果が持続します)
・注射薬 ラピアクタ(1回注射で効果が持続します) 

●出席停止期間
インフルエンザの出席停止期間は以下のように決められています。
「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」

●インフルエンザの予防
インフルエンザが発症してからの抗ウイルス薬の投与では脳症などの合併症を完全に抑止することはできません。インフルエンザの予防にはワクチン接種が大切です。集団生活をしている場合、喘息など基礎疾患がある場合、ご家族に小さなお子さんや妊娠中の方がいる場合には積極的にワクチン接種を済ませましょう。インフルエンザワクチンは任意接種で生後6か月から接種可能です。妊娠中でも接種可能で、母親がワクチンを接種すると生まれた赤ちゃんにも効果が期待できます。ワクチンの効果が現れるのは2回目の接種終了後だいたい2週間後からです。流行前に接種を完了することが大切です。流行期には人ごみをさけて、マスク着用、手洗いうがいなど感染予防に努めてください。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2016.10.31更新

●B型肝炎とは?
B型肝炎ウイルスの感染によって発症します。伝染力も非常に強いウイルスです。黄疸、発熱、腹痛、全身倦怠感などの症状を認めます(急性肝炎)。急性肝炎の予後は比較的良好と考えられていますが、時に感染が持続して慢性肝炎、肝臓がんの原因となります。これまで乳幼児のB型肝炎ウイルス感染は慢性化しやすく、成人の感染は急性感染が多いと考えられてきました。しかし近年、海外から肝炎ウイルスが持ち込まれるケースがあり、この場合は成人でも慢性化する可能性があります。

感染経路として最も多いのは母子感染です(お母さんがB型肝炎ウイルスのキャリアーの場合、出産の際に赤ちゃんが感染します)。次いで性交渉などによる感染があげられます。また頻度は少ないものの感染経路がはっきりしない例も存在します(父子感染など家族内での感染、保育園など集団生活などでの感染が考えられます。感染者のだ液や、汗、涙などにもウイルスが存在することが知られています)。

●感染予防
B型肝炎ウイルスの感染予防を考えるとき、急性感染と慢性持続性感染を分けて考える必要があります。まず、最も感染リスクの高い母子感染予防に関しては、現在、母親がB型肝炎ウイルスのキャリアーの場合、保険治療で赤ちゃんのガンマグロブリン投与とワクチン接種が行われています。
慢性化してしまう可能性が高く、集団生活する機会の多い乳幼児に関しては任意接種のワクチンにより感染を予防すべきです。海外には感染者の多い国が少なからず存在し、この様な国に渡航する場合や性交渉する可能性のある世代もまた感染予防の適応と考えます。

●B型肝炎ワクチン
特に慢性化しやすい乳幼児のB型肝炎ウイルスワクチンは肝臓がんの予防ワクチンと考えることもできます。WHO(世界保健機関)ではB型肝炎ワクチンをすべての子供たちが接種すべきワクチンと位置づけていますが、感染リスクの比較的低い日本において定期接種は行われていません。母親がB型肝炎ウイルスのキャリアーである以外のB型肝炎ウイルスワクチンの接種は任意接種となります。B型肝炎ワクチンはどの年齢でも接種可能なワクチンですが、特に慢性化しやすい乳幼児に積極的に接種が勧められます。初回接種2回と半年~1年後にもう1回接種します。ワクチンは20年程度有効と考えられますが、感染リスクが高い国に渡航する場合などには追加接種を考慮します。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

2016.10.31更新

おたふくかぜウイルス(ムンプスウイルス)の感染によって発症します。日本では毎年約60万人が発症しています。かかっても軽症の場合が多いのですが、重い合併症を引き起こす場合があります。
2~3週間の潜伏期の後に、両方またはどちらかの耳下腺がはれてきます。触ってもはっきりしたしこりに触れるわけではありませんが、家族など周囲の人が見るとはれているのに気がつきます。しばらくすると反対側も腫れてきます。発熱は起こることも、起こらないこともあります。症状が出ない(不顕性感染)場合もあります。またおたふくかぜ以外でも、耳下腺が腫れることもあります。周りでおたふくかぜが流行しているかどうかも診断の助けになります。

おたふくかぜには多くの合併症があります。約50人に1人の割合で無菌性髄膜炎が起こります。これを発症すると強い頭痛を訴え、嘔吐することもあります。約1,000人に1人の割合で、一生治らない重度の難聴になることがあります。年間700人くらいがかかっていると推定されています。毎年約30人に脳炎が起こっていて、障害が残ったり死亡したりすることもあります

⚫︎難聴に注意!

おたふく風邪の合併症のひとつが難聴です。約1,000人に1人の割合で発症します。年間700人くらいがかかっていると推定されています。多くの場合は片側性ですが、時に両側の難聴となります。治療は困難で一生治らない重度の難聴になることがありますから、ワクチンで未然に予防することが大切です。

 

●おたふくかぜワクチンは2回接種を!

多くの国では1回の接種では予防効果が不十分として2回接種が行われており、当院でも2回接種をお勧めしています。1歳を過ぎたらできるだけ速やかに初回接種を済ませて、3~5歳頃に2回目接種を行います。遅くともMRワクチンと同じ頃(就学前の1年間)までに接種を済ませることをお勧めしています。

投稿者: ぽっけキッズクリニック

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